問9についてはしばらくお待ちください。
第23回漢検一級模試開催です。
(一)次の傍線部分の読みをひらがなで記せ。1~20は音読み、21~30は訓読みである。
1 てこの原理が理解できず榾榾岩を動かした。
2 勝負に関して決して狎侮してはならぬ。
3 豺虎地下世界を跋扈する。
4 岡巒にて彼は壟断する。
5 わいせつ事件によって官僚を勒停する。
6 いきなり過去のトラウマを見せられて沮惴した。
7 石を治璞し宝石と言う。
8 やっと今までの暑さが火熄する
9 悪人のやり方を冗談で効尤して捕まる。
10 基本的に誰も助けてはくれないと燎寤した方が身のためかもしれない。
11 賭賽を個人でやることは禁止されている。
12 螫虫に刺されて応急措置をとる。
13 弁囿達が今後の財政について議論する。
14 この決まりを雕肝し、そのルールを遵守する。
15 資本社会の皁隷となる。
16 膩葉を天ぷらにして食す。
17 栄養学的に切ったタマネギを水に淹漬しない方がよい。
18 黄赤汁の余りを出だす。樹これ為に痿損す。
19 棣棣は、富て閑習するなり。
20 結局このグッズは瑕殄してしまった。
21 顔を洗い、口を灑ぐ。
22 烋いなことにけがはなかった。
23 アマツミヤ朝廷へ衙る。
24 彼の靴下は苴い色をしている。
25 北海道地震の義捐金を醵る。
26 雑木の芽の群れが朧に燿う。
27 燻し銀の演技を見せつける。
28 天子の命に愎くことをするんじゃねえよ馬鹿垂れ。
29 この中に一人、愿な奴がいる。お前やろ?
30 選挙の街宣で声が嗄れる。
(二)次の傍線部分のカタカナを漢字で記せ。19,20は国字でかけ。
1 こごまってたき火に当たる。
2 これは美的はんちゅうに属する問題だ。
3 ちょうどきゅうのどとはドレットノートから来ている。
4 日本酒を飲んでしゅうんが現れる。
5 最近管理人は悪い夢にうなされる。
6 薬効あらたかな胃腸薬である。
7 彼は結婚して彼女のぜいせいとなる。
8 ここら辺の土壌はけいしょうどでできている。
9 昔は農民へ稲の種など貸し付けるすいこという制度がある。
10 すいこの話だがここで八岐大蛇を討伐したそうな。
11 借金のせいでここう憔悴する。
12 ここうの道を閉ざされる。
13 彼はここうの臣として立派な人である。
14 かくろうの時期に買ったお守りを返納する。
15 白さいが電車に突進する。
16 かげきが皿に走っていて、いつ真っ二つになるかわからない。
17 政治に関してはうむこと無かれという言葉がある。
18 藤蔓をたがとした桶を使っていた。
19 いりを修繕して水はけがよくなった。
20 穀物をかますに入れて運ぶ。
(三)次の1~5の意味を的確に表す語を、下の「 」から選び、漢字で記せ。
1 祖父のあとを継ぐ子。
2 絶ったまま腰を深く折り曲げて礼をすること。
3 刈り除くこと。また、よくないものを取り除くこと。
4 間違った考えや意見。
5 人の死をいう。
「いんし・かいし・けいせつ・こうし・さんじょ・びび・びゅうけん・ちゅっちょく」
(四)次の四字熟語について問1と問2に答えよ。
問1 次の四字熟語の1~10に入る適切な語を下の「 」から選び漢字二字で記せ。
ア ( 1 )奔泉
イ ( 2 )一朝
ウ ( 3 )五竜
エ ( 4 )撫琴
オ ( 5 )叢裏
カ 減価( 6 )
キ 厳塞( 7 )
ク 黄道( 8 )
ケ 頭童( 9 )
コ 明窓( 10 )
「かっき・きちじつ・きんか・けいきょく・しかつ・じょうき・しょうきゃく・たいろ・とんこう・ようげき」
問2 次の11~15の解説・意味に当てはまる四字熟語を下の「 」から選び、その傍線部分だけの読みを平仮名で記せ。
11 苦境や厳しい試練にあるとき、初めて意志や節操が堅固な人かわかる。
12 詩文の美しい響きやリズムのこと。
13 こっそり女に手を出して女色にふけること。
14 臣下が君主を厳しくいさめること。
15 様々な奇異な様子にかわること。
「折檻諫言・窃玉偸香・敲金撃石・妖姿媚態・折花攀柳・譎詭変幻・狷介固陋・疾風勁草」
(五)次の熟字訓・当て字の読みを記せ。
1 苦汁
2 高加索
3 馬鮫魚
4 黄心樹
5 食蟻獣
6 埋葬虫
7 酔魚草
8 小雉尾草
9 胡孫眼
10 牛皮凍
(六)次の熟語の読み(音読み)と、その語義にふさわしい訓読みを(送り仮名に注意して)ひらがなで記せ。
ア 奸佞 - 奸す
イ 扞撫 - 扞ぐ
ウ 私鬻 - 鬻ぐ
エ 盍各 - 盍う
オ 殫洽 - 殫くす
(七)次の1~5の対義語、6~10の類義語を下の「 」の中から選び、漢字で記せ。「 」の中の語は一度だけ使うこと。
1 進捗
2 劫末
3 黙秘
4 壅塞
5 栖栖
6 燎火
7 杜漏
8 惣領
9 無沙汰
10 企図
「かいびゃく・きと・きゅうかつ・こうとう・さっかい・しょうよう・じゅたい・ずさん・ちゃくし・ひれき」
(八)次の故事・成語・諺のカタカナの部分を漢字で記せ。
1 心地の上にふうとうなければ、在るに随いて皆青山緑樹なり。
2 あぶった上に叩く。
3 鞍に拠りこべんす。
4 みょうが畑も花盛り。
5 ぼんてんこく食らわする。
6 人のごぼうで法事をする。
7 せいき空を蔽う。
8 大弁はとつなるが如し。
9 ひり肉を生ず。
10 幽明をちゅっちょくす。
(九)文章中の傍線(1~10)のカタカナを漢字に直し、傍線(ア~コ)の漢字の読みをひらがなで記せ。
[ア] 神父は厳かに手を伸べると、後ろにある窓のア硝子画を指さした。ちょうど薄日に照らされた窓は堂内を罩めたイ仄暗がりの中に、受難のウ基督を浮き上らせている。十字架の下に泣き惑ったマリヤや弟子たちも浮き上らせている。女は日本風に合掌しながら、静かにこの窓をふり仰いだ。
「あれが噂に承った南蛮の如来でございますか? エ倅の命さえ助かりますれば、わたくしはあのオ磔仏に一生仕えるのもかまいません。どうか1みょうごを賜るように御祈祷をお捧げ下さいまし。」
女の声は落着いた中に、深い感動を蔵している。神父はいよいよ勝ち誇ったようにうなじを少し反らせたまま、前よりも雄弁に話し出した。
「ジェズスは我々の罪を浄きよめ、我々の魂を救うために地上へ御降誕なすったのです。お聞きなさい、御一生の御2かんなん辛苦を!」
神聖な感動に充ち満ちた神父はそちらこちらを歩きながら、口早に基督の生涯を話した。3しゅうとく備り給う処女マリヤに御4じゅたいを告げに来た天使のことを、カ厩の中の御降誕のことを、御降誕を告げる星を便りに5にゅうこうや没薬を捧げに来た、賢い東方の博士たちのことを、メシアの出現を惧れるために、ヘロデ王の殺した童子たちのことを、ヨハネの洗礼を受けられたことを、山上の教えを説かれたことを、水を6ぶどうしゅに化せられたことを、盲人の眼を開かれたことを、マグダラのマリヤに憑きまとった七つの悪鬼を逐われたことを、死んだラザルを活かされたことを、水の上を歩かれたことを、キ驢馬の背にジェルサレムへ入られたことを、悲しい最後のク夕餉のことを、ケ橄欖の園のおん祈りのことを、………
[イ] ここは南蛮寺の堂内である。ふだんならばまだ硝子画の窓に日の光の当っている時分であろう。が、今日は梅雨曇だけに、日の暮の暗さと変りはない。その中にただゴティック風の柱がぼんやり木の肌はだを光らせながら、高だかとレクトリウムを守っている。それからずっと堂の奥に常燈明の油火が一つ、コ龕の中に7たたずんだ聖者の像を照らしている。参詣人はもう一人もいない。
そう云う薄暗い堂内に紅毛人の神父が一人、祈祷の頭を8たれている。年は四十五六であろう。額の狭い、9かんこつの突き出た、10ほおひげの深い男である。床の上に引きずった着物は「あびと」と称となえる僧衣らしい。そう云えば「こんたつ」と称となえる念珠も手頸を一巻巻いた後、かすかに青珠をたらしている。
(芥川龍之介『おしの』より)