(一)次の傍線部分の読みをひらがなで記せ。1~20は音読み、21~30は訓読みである。
1 玄纛はアナキズムの象徴である。
2 彼は讒殺の罪にかけられた。
3 北朝鮮とアメリカが耦語する話が上がっている。
4 卮言は統合失調症の一症状と言われる。
5 受け子を任せることにより罔民をなす。
6 今日は蔚藍天な素晴らしい日だ。
7 山で爛黄に血を吸われる。
8 証拠を干めて進躡する。
9 博打で害盈の数にはめられる。
10 古酒は汚樽をすることによってえられる。
11 大げんかをして失疇する。
12 失政の原因を糾戮して政治を変える。
13 あの夫婦は老後でも鏘鳳とした。
14 この問題はもはや涓波なことではない。
15 さすがあの教授は弁贍な人で講義に飽きない。
16 現在でよく言われる「ネトウヨ」と「パヨク」ではどちらが牆宇が狭いかの議論。
17 とあるイベントは詭道なツールを監視するイベントと言われた。
18 横浜では郵便の舳艫相銜むところと言われる。
19 判決で納贖の刑を科される。
20 漸冉として模試と漢検の難易度は上がっていく。
21 艨をテーマにしたゲームには艦これやアズールレーンなどがある。
22 自分を仗り、生き残りを中心とした戦法を取る。
23 馬を磬せて争うゲームまで登場した。
24 鸛は子供を運ぶ鳥と言われた。
25 量子化学による計算化学を大学で肄った。
26 外来種が日本に入国することを学者は瞿れている。
27 これから彼に竢ける運命とは・・・。
28 船を引くために筰を用意した。
29 大きな荷物を挈げる旅行客が多い。
30 すべての証明に拵ってこの定理は示された。
(二)次の傍線部分のカタカナを漢字で記せ。19,20は国字でかけ。
1 カイジによるシンゲン。
2 昔ではカイキョウが乗車契約を示すものであった。
3 討論では相手にキンドが無いとただの水掛け論になる。
4 中国のハイシを読み解き、古代中国の考えを踏襲する。
5 チノはリゼのようなカンカツゴエを出すのは苦手だ。
6 戦争後の沖縄の医師不足でカイホが導入された。
7 受験が終わり、サイカを迎える。
8 グウジなことに、模試に受かったことがないのに本番では受かった。
9 親は子供がインギンを通じることを嫌っていた。
10 戦のあとはなまぐさいシシムラが多くあった。
11 花ドンスを羽織って出かけていく。
12 今にも戦争が起こりそうなセイフウが漂う。
13 部屋に特にゼイブツはないつもりだ。
14 山を登って帰りの報告後、ソインとなった。
15 シュウレンが酷いのを理由にクーデターが起こる。
16 秋に穀物をシュウレンする。
17 人生は常にカイロである。素晴らしい政治家も短命である。
18 暗記するのが得意なだけでカイロするのが日本である。
19 オドシがちぎれている甲冑が見つかる。
20 シキミから抹香や線香を作る。
(三)次の1~5の意味を的確に表す語を、下の「 」から選び、漢字で記せ。
1 事業や制度などを押し広めること。
2 悲しんで声をあげて泣く。
3 面白く仕組んだ話。
4 農事を行うこと。
5 秩序が崩れること。
「あいこく・おえつ・かいこう・かいらん・きだん・こうじょ・しゃきょう・ぶんらん」
(四)次の四字熟語について問1と問2に答えよ。
問1 次の四字熟語の1~10に入る適切な語を下の「 」から選び漢字二字で記せ。
ア 盤楽[ 1 ]
イ 桑土[ 2 ]
ウ 罪悪[ 3 ]
エ 肥馬[ 4 ]
オ 生吞[ 5 ]
カ [ 6 ]開朗
キ [ 7 ]失色
ク [ 8 ]一新
ケ [ 9 ]神怡
コ [ 10 ]附驥
「あんぜん・かつぜん・かんぜん・かっぱく・けいきゅう・しんこう・ちゅうびゅう・とうてん・はんりょう・ゆうき」
問2 次の11~15の解説・意味に当てはまる四字熟語を下の「 」から選び、その傍線部分だけの読みを平仮名で記せ。
11 子が親の恩に報いて孝養を尽くすこと。
12 美人のこと。
13 無細工な。無器用な。
14 土地が荒れ果て、地味がやせていること。
15 見当違いのことをしても目的は達成できないたとえ。
「煩労汚辱・粗手笨脚・反哺之羞・深厲浅掲・曼理皓歯・荒瘠斥鹵・敲氷求火・肥大蕃息」
(五)次の熟字訓・当て字の読みを記せ。
1 髪菜
2 厚皮香
3 唐木香
4 油桃
5 芹子
6 三和土
7 大口魚
8 石蕗
9 満天星
10 沙市
(六)次の熟語の読み(音読み)と、その語義にふさわしい訓読みを(送り仮名に注意して)ひらがなで記せ。
ア 疼冷 - 疼む
イ 斫膾 - 斫る
ウ 贍給 - 贍む
エ 浹会 - 浹し
オ 欠折 - 折ける
(七)次の1~5の対義語、6~10の類義語を下の「 」の中から選び、漢字で記せ。「 」の中の語は一度だけ使うこと。
1 幇助
2 友于
3 貽厥
4 四始
5 生光
6 捕虜
7 通事
8 学校
9 不粋
10 皇位
「がち・さんしょう・しょき・せいちゅう・しょうしょ・しょうじょ・のうそ・ふしゅう・ほうそ・ろうじつ」
(八)次の故事・成語・諺のカタカナの部分を漢字で記せ。
1 利の在る所、皆ホンショと為る。
2 ハマグリ踏む心地。
3 流水腐らず、戸枢ロウせず。
4 ニンニクを剥きて茶碗に入る。
5 大車もクビキ無ければ進まず。
6 キキョクは鸞鳳の棲む所に非ず。
7 未だ散ぜざるのエンを知らず。
8 ホウレイの浜には魚を以て犬に食らわしむ。
9 韓盧を馳せてケントを逐う。
10 コブの上の腫物。
(九)文章中の傍線(1~10)のカタカナを漢字に直し、傍線(ア~コ)の漢字の読みをひらがなで記せ。
地震のことを書けと云ふ雑誌一つならず。何をどう書き飛ばすにせよ、さうは1チュウモンに応じ難ければ、思ひつきたること二三を記してやむべし。幸ひに2マンランをア咎むること勿れ。
この大震を3テンケンと思へとは渋沢子爵の云ふところなり。誰か自ら省れば脚に疵なきものあらんや。脚に疵あるはてんけんをイ蒙る所以、或はてんけんを蒙れりと思ひ得る所以なるべし、されど我は妻子を殺し、彼は家すら焼かれざるを見れば、誰か又ウ所謂てんけんの不公平なるに驚かざらんや。不公平なるてんけんを信ずるはてんけんを信ぜざるにエ若かざるべし。否、天の4ソウセイに、――当世に行はるる言葉を使へば、自然の我我人間に冷淡なることを知らざるべからず。
自然は人間に冷淡なり。大震はブウルジヨアとプロレタリアとを分わかたず。猛火は5ジンジンとオ溌皮とを分たず。自然の眼には人間も蚤も選ぶところなしと云へるトウルゲネフの散文詩は真実なり。のみならず人間の中なる自然も、人間の中なる人間に6アイレンを有するものにあらず。大震と猛火とは東京市民に日比谷公園の池に遊べる鶴とカ家鴨とを食らはしめたり。もし救護にして至らざりとせば、東京市民は野獣の如く人肉を食らひしやも知るべからず。
日比谷公園の池に遊べる鶴と家鴨とを食らはしめし境遇の7サンは恐るべし。されど鶴と家鴨とを――否、人肉を食ひしにもせよ、食ひしことは恐るるに足らず。自然は人間に冷淡なればなり。人間の中うちなる自然も又人間の中なる人間にあいれんを垂るることなければなり。鶴と家鴨とを食くらへるが故に、東京市民を獣心なりと云ふは、――キ惹いては一切人間を禽獣と選ぶことなしと云ふは、8ヒッキョウ意気地なきセンテイメンタリズムのみ。
自然は人間に冷淡なり。されど人間なるが故に、人間たる事実を9ケイベツすべからず。人間たる尊厳をク抛棄すべからず。人肉を食はずんば生き難しとせよ。汝とともに人肉を食はん。人肉を食うて腹10コゼンたらば、汝の父母妻子を始め、隣人を愛するにケ躊躇することなかれ。その後に尚余力あらば、風景を愛し、芸術を愛し、万般の学問を愛すべし。
誰か自ら省れば脚に疵なきものあらんや。僕の如きは両脚の疵、殆ど両脚を中断せんとす。されど幸ひにこの大震をてんけんなりと思ふ能はず。コ況んやてんけんの不公平なるにも呪詛の声を挙ぐる能はず。唯姉弟の家を焼かれ、数人の知友を死せしめしが故に、已み難き遺憾を感ずるのみ。我等は皆歎くべし、歎きたりと雖も絶望すべからず。絶望は死と暗黒とへの門なり。
出典『大正十二年九月一日の大震に際して』 著:芥川龍之介