第九回の漢検一級模試を行います。
(一)次の傍線部分の読みをひらがなで記せ。1~20は音読み、21~30は訓読みである。
1 うまく間合いに入って物事を調燮することができた。
2 今ではその宗教の考えが溥洽している。
3 研究に関しては貪穢な精神でやらなければならない。
4 国会前のデモ隊を雍閼した。
5 古い家なので鴉軋する音が家じゅうに響く。
6 繭さんの死には攀髥する人が少なかった。
7 廩稍を貰ってそれで生活している身である。
8 全く関係ない所で誣罔を受ける。
9 自由を纓鎖する政権であった。
10 外国人の制度の揀択することを差別という人が居る。
11 遐裔の果てまで追いかけられる。
12 STAP細胞の研究の綮処のところである。
13 死に物狂いでここまで趨攀してきた。
14 出来ないのなら人に枉性しないでいただきたい。
15 今回の国会は異常なほど鋸屑な答弁であった。
16 そんな鸚猩みたいな無意味なシュプレヒコールは無駄です。
17 その贏財は還元されなかった。
18 集団的自衛権可決は安倍総理の思惑の様に軫軫とは行かなかった。
19 稀罕にもその日は快晴であった。
20 身体障害者は眷矚し、精神障害者は捫す現在の風潮。
21 身体障害者は眷矚し、精神障害者は捫す現在の風潮。
22 悪を切り、善なるものを掖ける。
23 学業に俶れる生徒である。
24 遊び用の楸を用意する。
25 頬に靤が出来る。
26 これを以て紕りを訂正することとする。
27 拇を失う大けがをする。
28 佚いに一歩も譲らない争いをしている。
29 百人一首のカードをばらばらに肆べたとき、前のカードが一番最初に読まれる確率を求めよ。
30 かゆいところを爬くところでは申し分なし。
(二)次の傍線部分のカタカナを漢字で記せ。
1 お互いの情報にソゴが生じているようだ。
2 貴様は神の目の前にいる、ハイキせよ。それが身のためだ。
3 カリュウ状の薬を服用する。
4 この服は痩せても着れないからキエンすることにする。
5 きわめてキョウアイな性格をしていますね。
6 今回の台風によりわが県がほかの県からキョウジュツを受ける。
7 漢検一級模試はジョウカンのいずれかに公開される。
8 自分は邪魔者扱いされたとヒガむ。
9 暑さのミギリ御身お大事にお過ごしください。
10 子供の時は計算はルシしてやっていた。
11 隣に住む老夫婦はコウレイをいつまでも全うする人生を送ってきた。
12 高台からカンシャを受ける。
13 重罪人を現在運んでいるカンシャに大勢の人が集まる。
14 何を失礼な! フケイザイで訴えるぞ!
15 フケイザイによって薬の副作用が変わることもある。
(三)次の傍線部分のカタカナを国字で記せ。
1 そういう言動がいちいちシャクに障る。
2 モクの師匠のところに弟子入りする。
3 オオボラは食料として優秀ですか?
4 画ビョウを踏んづける。
5 10キロリットルの大雨を観測する。
(四)次の1~5の意味を的確に表す語を、下の「 」から選び、漢字で記せ。
1 才知に優れること。
2 過去の過ちを悔い改めること。
3 女性の色っぽくなまめかしいさま。
4 笛のこと。
5 広くその部門全般にわたって論じること。
「あだ・かてい・さいこう・しゅんかい・そうけい・はんろん・ぼうし」
(五)次の四字熟語について問1と問2に答えよ。
問1 次の四字熟語の1~10に入る適切な語を下の「 」から選び漢字二字で記せ。
ア ( 1 )鳥散
イ ( 2 )天空
ウ ( 3 )看戯
エ ( 4 )下石
オ ( 5 )泣璧
カ 笑比( 6 )
キ 煙波( 7 )
ク 眼光( 8 )
ケ 顔厚( 9 )
コ 扇枕( 10 )
「おんきん・かいかつ・かせい・けいけい・じくじ・じゅうしゅう・ひょうびょう・べんか・らくせい・わいし」
問2 次の11~15の解説・意味に当てはまるものを問1のア~コの四字熟語から一つ選び、記号(ア~コ)で記せ。
11 厳格で殆ど笑顔を見せないこと。
12 親孝行なこと。
13 人の危難につけ込んでさらに痛めつけること。
14 見識のないことのたとえ。
15 目が鋭く光るさま。
(六)次の熟字訓・当て字の読みを記せ。
1 酔魚草
2 染指草
3 小水葱
4 沢瀉
5 側柏
6 旌節花
7 山芹菜
8 礬水
9 石竜子
10 燭魚
(七)次の熟語の読み(音読み)と、その語義にふさわしい訓読みを(送り仮名に注意して)ひらがなで記せ。
ア 病孱 - 孱い
イ 閔傷 - 閔れむ
ウ 洽浹 - 洽し
エ 痿疾 - 痿れる
オ 訓迪 - 迪く
(八)次の1~5の対義語、6~10の類義語を下の「 」の中から選び、漢字で記せ。「 」の中の語は一度だけ使うこと。
1 練達
2 肥沃
3 崇拝
4 鮮魚
5 恬淡
6 山頂
7 雑報
8 肆欲
9 耳剽
10 礼物
「いほう・こうぎょ・こうぶ・さんてん・しよく・そくしゅう・どんらん・ふかん・ぼうとく・みみがくもん」
(九)次の故事・成語・諺のカタカナの部分を漢字で記せ。
1 シキは爵を待たず。
2 蹄窪の内、コウリュウを生せず。
3 積水をセンジンの谿に決す。
4 合抱の木もゴウマツより生ず。
5 人に善言を与うるはフハクより煖かなり。
6 ショウリョウ深林に巣くうも一枝に過ぎず。
7 レイサイ一点を通ず。
8 レイシュ設けず。
9 礼楽ケイセイその極は一なり。
10 カッキュウ鵬を笑う。
(十)文章中の傍線のカタカナを漢字に直し、傍線(ア~コ)の漢字の読みをひらがなで記せ。
(A)
夏より秋にかけての夜、美しさいうばかり無き雲を見ることあり。都会の人多くは心づかぬなるべし。舟に乗りて1ナダを行く折、天暗く水黒くして月星の光り洩れず、舷を打つ浪のみ青白く騒立ちて心細く覚ゆる沖中に、夜は丑三つともおもはるる頃、ア艙上に独り立つて海風の面を吹くがまま2イベイ湿りて重きをも問はず、寝られぬ旅の情を遣らんと詩など吟ずる時、いなづま忽として起りて、水天一斉に凄じき色に明るくなり、千畳万畳の濤の頭は白銀のイ簪したる如く輝き立つかと見れば、怪しき岩の如く獣の如く山の如く鬼の如く空にウ峙ち3ワダカまり居し雲の、皆黄金色の笹縁つけて、いとおごそかに、人の眼を驚かしたる、云はんかたなく美し。
(幸田露伴[雲のいろいろ]より)
(B)
隴西の李徴は博学4サイエイ、天宝の末年、若くして名を5コボウに連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、エ狷介、自みずからオ恃むところ6スコブる厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後は、故山、虢略に帰臥し、人と交りを絶って、ひたすら詩作に耽った。下吏となって長く膝を俗悪な大官の前に屈するよりは、詩家としての名を死後百年に遺そうとしたのである。しかし、文名は容易に揚らず、生活は日を逐うて苦しくなる。李徴は7ヨウヤくカ焦躁に駆られて来た。この頃ころからその容貌もキ峭刻となり、肉落ち骨秀ひいで、眼光のみ徒いたずらにけいけいとして、曾て進士に8トウダイした頃の豊頬の美少年のク俤は、何処に求めようもない。数年の後、貧窮に堪えず、妻子の衣食のために遂に節を屈して、再び東へ赴き、一地方官吏の職を奉ずることになった。一方、これは、己の詩業に半ば絶望したためでもある。曾ての同輩は既に遥か高位に進み、彼が昔、鈍物として歯牙にもかけなかったその連中の下命を拝さねばならぬことが、往年のケ儁才李徴の自尊心を如何いかに傷つけたかは、想像に難くない。彼はコ怏々として楽しまず、9キョウハイの性は10イヨイヨ抑え難くなった。一年の後、公用で旅に出、汝水のほとりに宿った時、遂に発狂した。或夜半、急に顔色を変えて寝床から起上ると、何か訳の分らぬことを叫びつつそのまま下にとび下りて、闇の中へ駈出した。彼は二度と戻もどって来なかった。附近の山野を捜索しても、何の手掛りもない。その後李徴がどうなったかを知る者は、誰もなかった。
(中島敦[山月記]より)